リスクにかけろ

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「40兆円の男たち」感想 レイ・ダリオ編1

 前回の記事で書いた「40兆円の男たち」で気になった所の簡単なメモと考えたことを書いていこうと思う。

 僕が特に気になったのは1章のレイ・ダリオと、2章のティム・ウォン。理由は僕がシステマティックな投資手法を使っているから。

 

レイ・ダリオ

レイ・ダリオの軸は大きく3つに分けられる気がしている。

相関性

グローバルマクロ分析

・行動規範

 

相関性とリターンの話

レイ・ダリオ3つの柱の1つ。レイ・ダリオいわく、ポートフォリオ相関性を減らしていくと、収益率を変えること無くリスクを劇的に減らす事ができるらしい。

 レイ・ダリオの運営するブリッジウォーターでは、相関性をなくしていく過程で、あらゆる国、アセットクラスに分散している。レイ・ダリオいわく、多くのヘッジファンドの投資先は株に対する相関性が非常に高く、また新興国へのエクスポージャーが非常に低いという。

 リスクを減らしてリスク・リターンを高めていくという手法はブリッジウォーターの顧客である機関投資家にとって非常に都合がいい。というのも、大きな資金を運用すればするほど、マーケットインパクトの問題が出てくると同時に、リスクへの対処というのが問題になってくる。機関投資家は企業や大学、自治体だったりするわけで、その資金の多くは飛ばすことのできないお金である。

 かといって、僕のような個人投資家が同じアプローチを取れるかというと、不可能である。理由は以下のとおり。

・充分に分散できるほどの資金量がない。(ゆえに投信があるのだけれど、手数料高杉)

・充分なリサーチを行うほどの情報と労働力が無い。

・リスクリターンではなく、絶対リターンが低い

3つ目について書くと、個人投資家資金量が少ない。そのため、個人投資家が大きく資産を築くには、莫大なリターンが必要になる。個人投資家の特徴をあげると

・マーケットインパクトが小さい

・リスクリターンだけでなく、絶対リターンを増やす必要がある

僕は全ての投資手法は相対的な優位性だと思っている。言い換えると、全てはカーブフィッティングであり、収益機会は外部環境の変化や他のプレイヤーの行動変化によって時間と共に減少していく。

 その中で莫大なリターンを得るには、分散をなるべく少なくして、より早いスパンで市場の歪みに手法をフィッティングさせていく必要があると思っている。これは、レイ・ダリオのような大口機関投資家には不可能で、マーケットインパクトの小ささを利用した戦略である。

 

レイ・ダリオの相関性からの示唆

・分散を増やして相関を減らすほどリスクリターンが高まること

・大資金を扱うこと

一つ目に関しては、システムトレードではよく言われることだけど、複数の戦略を組み合わせて使うことでDDを減らしてリスクリターンを高めることができる。レイ・ダリオほど多くの分散は不可能であっても、特定の市場や指数に対して異なる相関を持つ戦略を組み合わせることは有効かもしれない。

 そして、何かを増やせば増やすほどリスクリターンが高まるという性質は、ケリー基準やラルフ・ビンスのfの性質に似ている。この二つはマネーマネジメント手法であり、理想的なリスクエクスポージャーが存在するという話。面白いのは、理想的なラインよりもリスクベットを減らした場合、リスクは加算的に減少するがリターンは乗数的に減少する(つまり、リスク・リターンが減少する)ということである。この事は面白い示唆である。

 

 2つ目に関しては、あまりに大きな資産はマーケットインパクトを増やし、収益性を減少させるという定説がある。これに対する1つの答えは、分散である。多くの市場に分散させることで、マーケットインパクトを減少させることができる。

 ということは、上記した個人投資家の優位性であるマーケットインパクトの小ささは今後薄れていくのではないだろうか。つまり、コンピュータによる分散で流動性の乏しい銘柄に資金が入ってくるようになれば、流動性プレミアムは剥げ落ちることになる。

実際にHFTのような特殊な連中は流動性を殆ど気にせず、むしろスプレッドの大きさを逆に利用して収益を上げている。

 

ちょっと長くなったので次回に。

 

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